【動機づけによるトレーニング】
チェス、音楽、サッカーなど、さまざまな分野での「厳しい訓練」は成功を得るためのカギとなっているが、最近の研究によると、上達にとって重要なのは、持って生まれた能力よりも「動機づけ」なのだという。
つまり「成功のカギは才能よりもトレーニングだ」ということ。
大昔の祖先にとって、狩猟は生存に不可欠な技術である。
熟練の狩人はライオンがどこにいるかがわかるだけではなく、ライオンがどこへ行こうとしているのかも推察することができる。
カリフォルニア州立大学フラートン校の人類学者ボックは「追跡技術の向上は幼少期に始まり30代でピークを迎えるまでずっと直線的に上昇する」と語っている。
だが、脳外科医を訓練するのに必要な時間は、これよりはるかに少ないのだ。
初心者に比べて格段に技能が優っていてこそ、真の達人といえるわけで、そうでなければ、優れた実績を持つ素人でしかない。
ビネーは当初、チェスマスターは写真に近いイメージでチェス盤をとらえていると考えた。
だがその後の研究で、チェスマスターはナイトのたてがみや駒の木目を見ているのではなく、特定の駒が他の駒とどんな位置関係にあるかという概括的な知識だけを思い出 していることを発見したのだ。
ワーキングメモリーは「心のメモ帳」のようなもので、プリンストン大学の心理学者ミラーは、1956年の「マジカルナンバー7プラスマイナス2」という論文で、人が一度に考えられる項目は5つから9つにすぎないことを示した。
しかしサイモンは、チェスマスターより情報の階層構造をひとかたまりのチャンクとしてとらえることで、こうした限界を超えることができると論じたのだ!